この際だから、断捨離について再考する。

 

「断捨離」というのは、考えた人がいて、最近の流行語であります。昔はなかった言葉です。当然ながら「広辞苑」の昔の版にはないわけで、たぶん最近の辞書なら採用していてもおかしくない言葉になりました。この「断捨離」というのを普通の言葉でいうと、「片付け」というものでありまして、硬い言葉でいうと「整理整頓」とでもいうのでありましょう。捨てるものが無価値だと断定するなら、「ごみ捨て」と呼べばいいのであります。「ガラクタをどうにかする」などという俗語もありまして、言葉というのは類語や同義語がたくさんあるので、掘り起こすときりがないのであります。ちなみに、去年断行した書棚の断捨離から漏れて手元に残った本の中に見つけた、角川書店の「類語国語辞典」というものを見てみると、次のような項目がありました。


  整頓…きちんと片づけること


そこに並んでいることばを、そのまま列挙してみると、整う、整える、揃う、揃い、揃える、取り揃える、出揃う、繕う、取り繕う、まとまる、まとめる、片付く、片付ける、取り片づける、跡片付け、仕舞う、始末、後始末、整頓、整理、というようなことでありまして、なるほど親の家を片付けたのは、あれは「お仕舞いにした」「始末した」「後始末を付けた」ということなのであります。言葉というものの面白さが沸き上がるんですが、さらに関連項目を探ってみると、次のような項目も出てくるのであります。


  決着…物事の決まりがつくこと


抜粋すると、「片付く」のほかに、「締め括る」「結末をつける」「落着する」「終止符を打つ」「ピリオドを打つ」「けりをつける」「清算」「総決算」などという表現が目に付くのであります。「断捨離」などというハイカラな言葉を使わなくても、勘所を逃すことのない言葉がいろいろあるわけで、親の人生に終止符を打つような行為が、家の跡片付けなのであります。こうなると、自分が苦労したことが、どういう性質のものか鮮明に意識できそうではないかと思います。主が死んでガラクタになったものを捨てて、ピリオドを打ったのであります。ああいい気持ちだったなあ、と思い出します。調子に乗って探りに探ってみると、こんな項目にも「片付く」が出てきて、頭の凝り固まったところがほぐれるのであります。


  処置…物事を取り計らってかたをつけること


これの類語をその辞典で眺めると、目に付くのは、「とりさばく」「切り盛りする」「やりくり算段」「手加減」「さじ加減」「斟酌する」「尻ぬぐい」「処分」「措置」「収拾する」などでありますが、最後に「快刀乱麻を断つ」が出てきて、ああ、おいらの行為はこれだよこれ、と思いました。「快刀乱麻を断つ」というのは、切れ味の良い刀で、もつれた麻を切るように、複雑な事態でも鮮やかに処理するという意味なんだそうであります。一つ利口になったかも。


とどのつまり、近頃話題になったミニマリストの断捨離というのは、収拾のつかなくなった生活にけりを付けることでありまして、それが親の死後の整理なら、「尻ぬぐい」をすることなのであります。将来に役立たないのであれば、書籍も文具も、衣類も家具調度品も、そして美術品や骨董品、趣味のコレクションも、そしてアルバム、写真、映像、録音、文集、卒業証書なんかも、全部始末するのがいいのでありましょう。必要なものは、公的な記録に残っているし、輝かしいものなら赤の他人が保有してくれているのであります。 

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